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令和元年度 札幌圏域障がい者虐待防止研修(市町村向け)
令和2221日、北海道石狩振興局と障がい者相談支援センター夢民の主催により、管内市町村職員の方々を対象とした「令和元年度札幌圏域障がい者虐待防止研修」を開催しました。虐待防止・権利擁護にかかわる障害者虐待防止法、障害者差別解消法の円滑な運用・推進を目指し、今年度は、事実確認調査における情報収集と司法・捜査面接技法への理解を深める機会としました。
障害者虐待の法的位置づけ、種別・類型ごとの発生件数の推移、防止施策、通報義務などについて講義があった後、「知的障がい者のコミュニケーション特性と面接スキル―虐待事案等の事実確認を中心に―」をテーマに、知的障がい者の特徴(認知能力、コミュニケーションスキル)に配慮し、当事者への事実確認のポイントを踏まえた司法面接の手法を学ぶ演習を行いました。
面接における留意点として、質問の種類(自由再生質問、焦点化質問、選択的質問、はい―いいえ質問、誘導質問)や良い聴き手・悪い聴き手、会話の主体を相手に置き、長く話してもらう技法に関して演習を実施しました。最後には、31(目撃者、面接者、評価者)となり、目撃者役が架空の虐待事案の映像を見た後、面接者役が実際に聴き取りを行う演習に取り組み、評価者役がやりとりの使い分けと質問種類の傾向、面談の癖などを評価・フィードバックし、実践イメージを膨らませました。
最後に、國松直人講師(胆振圏域障がい者総合相談支援センターるぴなす)より「このような、見たことを聞き取る面接技法を活用し、虐待事案への技術を深めていただき、不適切な支援がなくなるよう、普及啓発の面でも、市町村の皆様それぞれの立場での協力をお願いしたい」との呼び掛けがあり終了となりました。
ご参加いただいた各市町村職員の皆様、講師の國松さん、誠にありがとうございました。

令和元年度 相談支援専門員・サービス管理責任者等フォローアップ研修(道央ブロック3圏域)
令和元年1115日、道立道民活動センターかでる27で、道央ブロック広域相談支援体制整備事業所障がい者相談支援センター夢民、地域生活支援センターあ~ち、しりべし圏域総合支援センターの主催による「令和元年度 相談支援専門員・サービス管理責任者等フォローアップ研修」を開催しました当日のタイムスケジュール・内容はこちらをご覧下さい。今年度は、相談支援専門員、サービス管理責任者および児童発達支援管理責任者の法定研修のカリキュラムに位置付けられることとなった“スーパービジョン”を題材に取り上げ、名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科の松浦智和氏を講師に、33名の方々に受講いただき、講話とグループ演習を通じ、法定研修に向けた基礎部分、対人援助職としての専門性・実践技術向上へ、考察を深めてもらう機会としました。
午前の部では、松浦氏が『スーパービジョンとは何か~意義と可能性を再考する~』をテーマに講話。スーパーバイザー熟練のSW)がスーパーバイジー経験の浅いSW)に対し、その人の能力を最大限に生かしてよりよい実践ができるように支援を行うスーパービジョン(SV)の枠組みについて、どのあたりに目標、照準を合わせ、実践するかを学んでもらいたいとの趣旨から、途中、DVD上映なども織り交ぜて、解説しました。
援助の質を高めるには、専門職も支援される必要があり、SVを通じ、企業の従業員ではなく、専門職として業務に臨んでいることの意識化、何に躓いているのかの業務の見える化リスクマネジメント、発想の枠組みを変えるストレス・不安の重層性に気づき、次のステップを考えるなどの意義が挙げられるが、そもそも誰がバイザーになり得るのかという議論から、業務の一部として取り込まれていない状況も多く、日本人の人間関係重視の視点肝心のワーカーとしての「責任」「権限」部分の欠落、曖昧さを好む文化などの根付かない背景からも、まだまだ少数派といえる状況にあり、その意義と必要性の認識を広げていくところから取り組むべき段階にあることが示されました。
午後の部は、演習に入り、各グループで、バイジー役とバイザー役、観察者に分かれ、ロールプレイを実施し、実践イメージの共有を図りました。グループワークでは「SVを浸透させるためには」のテーマに対し、バイザーになり得る人向けの研修の実施、今回のような学びのフィードバック、法人会議でのトップダウン、社風を変えるためにやってみる、制度の流れに乗る法定研修・加算等に組み込まれるタイミングなどの意見も交わされました。
まとめとして、なぜSVが必要なのかの視点から、専門職に託される権利擁護、虐待防止の予防戦略として取り入れていくことの大切さ施設従事者、組織風土の問題など、すべての人にリスクがある、クライエントの変化が見られないプロセスの中で、希望を引き出していくべき支援者側の疲弊・モチベーション低下を救うためにも重要であることを、再度、呼び掛け、締め括りとしました。
ご協力いただきました、講師、参加者の皆様、誠にありがとうございました。

令和元年度 障がい福祉サービス等初任者研修(札幌・後志圏域)
令和元年8月30日、札幌市生涯学習総合センターちえりあで、石狩振興局、後志総合振興局、道央ブロック広域相談支援体制整備事業受託事業所(障がい者相談支援センター夢民、しりべし圏域総合支援センター、地域生活支援センターあ~ち)の主催による「令和元年度 障がい福祉サービス等初任者研修(札幌・後志圏域)」を開催しました(当日のプログラムはこちらをご覧下さい)。障がい福祉関連の業務従事年数おおむね5年未満の方々を中心に、75名にご参加いただき、歴史・制度の変遷、支援者としての基本理念や価値観を学ぶとともに、当事者の生の声や思いに耳を傾け、グループワークを通じ、事業種別・職種の枠組みを超え、意見・感想を共有する中で、当事者とのかかわり方、地域における障がい理解、他職種・事業所間連携の重要性をあらためて考える機会としました。
午前の部では、地域生活支援センターあ~ちのセンター長・川瀬宏義氏が『障がい福祉の基本理念』と題して講演。施策の歴史では、戦後の行政措置、対象者の制限、医学モデルを基盤とした判定、訓練・保護主義的な位置付け、障がい児殺し事件への同情論と青い芝の会による減刑嘆願反対運動をはじめとする当事者運動活性化の時代を経て、ノーマライゼーション理念の浸透、自立生活運動から登場してきた新たな自立観「自立とは自己決定」という考え方が大きな転換点となったことを紹介。
その後、2003年の支援費制度施行により、措置から契約による利用者本位のサービス体系への移行、地域生活を保障するシステム構築の観点から、相談事業が発展してきた経緯、障害理解では、社会モデルによる支援観への変化、ICF(国際生活機能分類の環境因子の一つに支援者自身が含まれることが大事であることを解説。まとめでは、歴史・施策の流れを知り、障がい者支援の基本的価値から支援の内実と方向性を常に問い続けていくこと、ソーシャルワークのグローバル定義に掲げられているような社会福祉実践の観点が重要であり、システムとしての自立支援協議会、拠点整備の仕組みづくりは、専門性を持つ支援者同士が連携することで、本人の心の中も見えてくるような支援の実現につながる最大の強みであり、この機会に、自立支援協議会の存在も知ってもらいたいと呼び掛けました。
午後の部では、障がい当事者講師の会すぷりんぐの牧野准子代表と古長尚義氏に、お話いただき、当事者の思い、支援者側の在り方へ理解を深めました。
牧野氏は、進行性の骨髄の難病発症から、現在に至るまでの葛藤と周囲のかかわりを、中途障がいの立場、また、建築士・インテリアコーディネーターとして、街の環境やこころのバリアフリーを作る仕事に携わる独自の視点から講話。ジオラマを例にした車いすユーザーの目線から見える物の違い、昨年来、取沙汰されている法定雇用率・障害者雇用の問題の関連からは、自ら社協のカウンセラーを務めていた経験談を踏まえ、『はたらく意味』というメッセージも盛り込み、最後には「障がいを持ちたくて持った人など一人もいない。健常者だったら幸せだったかとも限らない。障がいがあっても幸せと感じられるように前向きに生きている」と、当事者理解のヒントにもつながる、現在の心境を真摯に語っていただきました。
古長氏は、リサイクルショップでの勤務時に、パニック発作で倒れた後、うつ病、不安障害などを経験し、現在も頭の圧迫感、喉の異物感を抱えながらも、一般就労に取り組んでいる立場から、人と人、心のつながりの大切さをテーマに講話。就労支援事業所の利用時、「出しても70%ぐらいの力」と見守ってくれた支援員のサポート、信頼関係ができてきたところで辞めてしまう職員の出入りの激しさに、利用者も辞めてしまう悪循環にあった事業所、次に一般就労を始めた際、業務量的には大変だったが、人として扱ってくれている感じを受け、逆に楽な気持ちを感じたエピソードなどを紹介。「薬は他力本願だが、心の蘇生は自力でできる体の器官は悪くないのに、心の力で過呼吸が起きることを考えると、その力は偉大。病を持った人も大変だが、経験していないとその症状もわからないため、支える側はもっと大変。両方の視点が必要であり、昔でいう身近な近所の人など、いい距離感を持った人、支援者が重要な第3者的距離感を持った人になり得る」と投げ掛けました。
最後には、グループワークで、全体を通じての意見や感想を共有。発表では、講師側へ「引きこもりの利用者のやる気を引き出すポイントは」「どのような事業所環境、支援者のかかわり方がよいと感じるか」「自己決定を促すヒントは」「ふつうの手助けとはどのような感覚か」などの質問が挙がっていました。
ご協力いただきました講師の皆様、参加者の皆様、誠にありがとうございました。